江戸川乱歩 怪人二十面相
江戸川乱歩と怪盗ルパンのかかわりといえば、やはり『黄金仮面』が真っ先に頭に思い浮かぶかもしれません。
しかし、まずはルパンの影響を受けて乱歩が創造した大怪盗、二十面相から検討してみましょう。
今回とりあげるのは、『怪人二十面相』ですが、ほかの二十面相ものをあたれば、まだまだ出てくるのではないでしょうか。
まずは、海外から帰国した一郎さんが、盗難予告のあったダイアモンドを父親と一緒に守りながら、刻一刻と迫る盗難予告時刻を待つシーンです。
緊張が高まる中、ついに予告時刻がきます。やれやれなにもなかったか、と思いきや、二人の目の前にあった箱の中のダイアモンドはいつの間にやら
消えうせています。
・・・・・・と、ここまで書けば、熱心なルパンファンならもうお分かりでしょう。 そう、このシーンは戯曲『アルセーヌ・ルパン』(ポプラ社版『消えた宝冠』、偕成社版『ルパンの冒険』)のシーンそのままなのです。
続いては、オレンジの皮をばらまく少年と、その合図をうけて道々十字のマークをかいている怪しげな二人を追って、小林少年がおびき出されます。
こちらは、『赤い絹のスカーフ』でガニマールがルパンに呼び出されるシーンの引き写しです。
さらに先へ進むと、怪人二十面相のアジトを突き止めた小林少年(明智君だったかな?)が、盗品の国宝級仏像を叩き壊して警部に慌てて止められます。
このシーンは、『奇岩城』でイジドール少年が地下礼拝堂の石像を叩き壊す、あのシーンの模倣です。
まだまだこれだけではないのです。アジトを暴かれた二十面相は、新たなる標的に予告状を送ります。
予告状を受け取った方の富豪は大慌てです。しかし、近くの湖に明智小五郎が休養にきているという情報を得て、事件を未然に防いでほしいという依頼をかけます。
・・・・・・ルパンファンならもうネタはわかりますね?そう、この明智小五郎、怪人二十面相の変装です。
そして、元ネタはもちろん、『怪盗紳士ルパン』「獄中のルパン」です。
これでもか、というほどルパンネタが詰まったこの作品、ルパンファンとして嬉しいような悔しいような。
小林秀雄は『昭和の探偵小説』において、「江戸川君は創作力がない」と書いていますが、かの偉大な江戸川乱歩、とはいえ、この作品を読む限りにおいては、
うんうん、とうなづきたくもなるというものです。
しかしこの怪人二十面相、変装がお得意なところと犯行の大胆さ、犯行手口はいかにもルパンなのですが、しばしば描写される風貌・性格は下品で粗野、
そのあたりは似ても似つかないのです。やはりあくまで明智君が主人公だからでしょうか?
せっかくここまでルパンの影響を色濃くするなら、どうして颯爽とした怪盗にしなかったのでしょうか。
また後日、『黄金仮面』やその他の作品についても検証していきたいと思います。
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