アルセーヌ・ルパンのライバルたち・5
イジドール・ボートルレ
まだ高校生の初々しい探偵。ガストン・ルルーの『黄色い部屋の謎』に出てくるルルタービユをモデルにしたのではないかと言われている。
学校では、新聞記事から、事件解決前に犯人や犯行方法を推理して友人たちに喝采を浴びていた。ルパンの盗みの手口をまとめたパンフレットを作ったりもしている。高校では「シャーロック・ホームズの好敵手」と言われていた。
夏休みにちょっとした思い付きから、付け髭をつけて新聞記者と偽り旅行中、『奇岩城』の事件に行き会う。
イジドールは、ルパンが仕事のためというよりもむしろ恋の為に守りたかった秘密を暴いてしまうのだが、ルパンをてこずらせたのは、彼の探偵能力もさる事ながら、彼の純粋さ、初々しさだった。
普段は強敵に皮肉な態度をとり、必要があれば徹底的に追い詰めるルパンも、父を心配して素直に泣きさえするイジドールを相手にすると、徹底的な攻撃がしづらかったようだ。
奇岩城の秘密は、カリオストロ伯爵夫人と競った「七本枝の燭台」の謎に連なるものである。だからもしも、ルパンにとって奇岩城の秘密の探求に、カリオストロ伯爵夫人に誘拐された息子の手がかりを探す意味も含まれていたのだとしたら、ルパンがイジドールへの仮借ない攻撃を躊躇したのも極自然な感情だろう。
登場作品
『奇岩城』
本文より
だが、なんという奇妙な相手だ!これが敵だろうか?敵らしい様子も調子も全然ないのだ。
(『奇岩城』石川 湧訳、創元推理文庫、p101
「十年以来、私は君のような強敵に出会ったことがない。ガニマールだって、シャーロック・ホームズだって、子供みたいにあしらったものだ。きみを相手では、わたしは守勢に立つどころか、退却を余儀なくされる。そうだ、今のところ、わたしが敗者であることを自認しなくちゃならんことは、きみもわたしもよく知っている。」
(同、p103)
「ねえ、きみはかわいいよ、坊ちゃん……むやみに抱いてやりたくなる……きみのいつもびっくりしたような目つきが、ぐんと胸にこたえるよ……(中略)ああ!おれはなんで遠慮しているんだろう……きみをしばって、猿ぐつわをはめるくらい、造作もないんだが……(中略)いや、だめだ、おれは最後までへまをやる運命なんだ……しかたがないじゃないか?だれにだって弱点があるのさ……おれはきみに対して弱みがあるんだ……」
(同、p177-178)
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