アルセーヌ・ルパンのライバルたち1
シャーロック・ホームズ
ホームズがルパンのライバルというよりは、ルブランがドイルをライバル視していたというのが正確なところ。
ホームズ物の人気に加えてルパンのモデルとなった一人には、ドイルの兄弟が書いた義賊ラッフルズがいるというから、ルブランがドイルを意識するのもなおさらだろう。
一方で、フランスの読者がこの対決を是非見てみたいと思った気持ちも良くわかる。
最初の短編集『怪盗紳士ルパン』にも収録されている「遅かりしシャーロック・ホームズ」に、ルブランは初めてホームズを借用し、ドイルから抗議を受けている。このエピソードは、本当は歴史小説が書きたいといってホームズ物を止めたがったドイルがそれでもホームズに愛情を注いでいたことを示すエピソードのようで興味深い。
ともあれ、以降もルブランはアナグラムを使って「エルロック・ショルメス」としてホームズを2度自作中に登場させる。
さて結果はというと、ホームズは謎を解くがルパンは逃げた後、と、僅差でルパンの勝ちとしている。まあルパンの生みの親が書いているのだからそうするのは当然だろう。
しかしこの勝負、作家としての格ではドイルの勝ちのようだ。 また、小説としての人気においてもルパンはホームズに負けている。
去年だと思うが、日本人作家が『真説・ルパン対ホームズ』という本を出している。上記の経歴を知らずに出したのなら不勉強だし、知っていて出したなら悪趣味だと思いまだ手をつけずにいる。
しかし私が思うに、『自分が犯人です』といってまわるルパンの事件は、推理すべき点が少なくホームズの興味を引かないのではなかろうか。この対決、やはりドイル側からは成立しないようだ。
登場作品
『怪盗紳士ルパン』「おそかりしシャーロック・ホームズ」
『ルパン対エルロック・ショルメス』
『奇岩城』
本文より
(前略)それに、とにかくエルロック・ショルメス(シャーロック・ホームズ)である。つまり、直観・観察・明敏・聡明の天才だ。まるで自然は、想像力が生み出した最も異常な警察官の二つのタイプを取ってたわむれたかのようである。すなわち、エドガー・ポオのデュパンと、ガボリオーのルコックとを採って、さらにいっそう異常で非現実的な独特のタイプを作ったみたいだ。そして人は、彼をして全世界で有名ならしめた功績の物語を聞くとき、この人、エルロック・ショルメスもまた伝説上の人物、大小説家、たとえばコナン・ドイルの頭脳から生まれでた英雄ではないか、と疑うのである。(後略)
(『リュパン対ホームズ』石川 湧訳、創元推理文庫、p87より。
*訳文ではショルメスをホームズに置き換えてありますが、ここでは原文にしたがってアナグラム化した名前に戻してあります
|